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ユーロ圏の追加利上げの行方

欧州中央銀行(ECB)が、追加利上げの重要な判断材料としているユーロ圏の5月消費者物価指数(インフレ率)・速報値が発表され前年比2.7%の上昇となり、市場予想の2.8%よりも弱い結果となりました。4月のインフレ率は2.8%と、2008年10月以来の高水準から僅かに緩んでいます。トリシェ総裁が6月の政策金利の据え置きを示唆していたことや5月のインフレ率が鈍化したことで、ECBは6月の定例理事会で金利を据え置く確率を高めたことになります。

 

最近の欧州事情は、ギリシャやスペインなどの財政危機に関する悪材料が目立ち、具体的かつ正式な決定のないまま、各国の当局者から様々な意見が伝わってきます。統一された見解でないこと自体が財政危機の管理体制の未熟さを露呈して、投資家のリスク回避姿勢を高めユーロが売られやすい環境を作っていますが、ユーロ圏全体としての景気は回復基調にあり、物価の上昇という形で表れています。ギリシャやスペインなど南部の国は厳しい財政運営と高失業率に悩まされていますが、ドイツやフランスなど北部の国は経済的に好調さを保っています。

 

ユーロ圏の構造問題は深刻です。欧州連合(EU)加盟27カ国のうちユーロを法定通貨として採用している国は、現在17カ国あります。ECBは経済が好調な国と不振に苦しんでいる国の両方を抱え、共通の金融政策を実行しています。当然、財政状況の全く違う国々に対し財政政策による域内調整にも限界が見え隠れします。財政難に見舞われている南部の国々への経済支援を出来るだけ早急に強化しないとユーロに対する信認は崩れ、ユーロ圏の枠組みの維持も難しくなります。ユーロ圏のインフレ率は昨年12月以来2.0%を超えており、ECBがインフレ率の目安としている「2.0%未満」を超えています。追加利上げを行い、インフレ期待を抑え込みたいところですが、財政難に苦しんでいる南部の国々に対して利上げは更なる財政負担を強いることになります。

 

ECB政策委員会メンバーで次期ECB総裁に内定しているイタリア中銀のドラギ総裁は、「域内のソブリン債危機や銀行の資本不足問題によってECBの関心が物価安定の維持という最重要目標からそれることはない」と強調しました。4月利上げ後も引き続き、インフレ期待の高まりを抑える決意を堅持したことになります。一方で経済協力開発機構(OECD)は5月25日に各国政府が財政赤字縮小に向けた歳出削減を進める中で、追加利上げは「直ちには必要ない」との見解を示しています。

 

結果的にECBの「物価安定の維持」という最重要目標から外れることはありませんが、5月の消費者物価指数が僅かに低下したことにより、今のところ利上げを急ぐ必要性はなくなりました。6月の追加利上げの可能性は低く、7月以降の追加利上げの可能性を見込んでいます。